ヒールに気を付けて
2005年4月22日更新
ある午後のできごとです。
わたしの前を細いヒールのついた黒いパンプスを履いた女性が歩いていました。
おろしたてのパンプスだったことが一目でわかる、美しい光沢が印象的でした。
彼女はマンホールを避けて歩き、排水溝のフタを軽くまたぎ、コツコツとヒールを鳴らして軽い足取りで道を進んでいました。
マンホールのフタの穴とか、排水溝のフタとかに運悪くヒールがはさまってしまうと、ヒールの巻き革が裂けてしまい、ハイヒールは台無しになってしまうのです。
ハイヒールのかかとは傷みやすく、他にも砂利道、石畳、地下鉄の排気口など、どれもハイヒールの敵です。
彼女はハイヒールに慣れていたのでしょう、ヒールを傷つけないように注意して歩いていたのです。
しばらく行くと道路工事をしている場所に出ました。
そこではアスファルトがはがされて砂利道になっていましたが、道の端に緑色のビニルシートが敷かれていて、歩行者通路になっていました。
彼女はこの上を進みました。
わたしも彼女の美しいハイヒールを見つつ進みました。
彼女がビニルシートの半ばにさしかかったとき、突然ハイヒールが脱げました。
ヒールがビニルシートにつきささったのです。
彼女は足を入れ直して履き直そうとしましたが、ヒールがつきささったまま抜けなかったようです。
ハンドバッグを小脇に抱えるとしゃがみこみ、手でハイヒールをシートから抜き取りました。
そのときちょっと悲しそうな表情をしました。
ヒールを包む巻き革が1センチくらい裂けていたのです。

すぐうしろにわたしがいたためか、彼女はすぐにハイヒールを履くと小走りになり、ビニルシートを通り抜けました。
そしてしばらく進んだところで立ち止まり、傷ついたパンプスを脱ぎ、指先でヒールの傷を撫でていました。
そしてまたパンプスを履き直すと、早足で駅の方に向かって歩いて行きました。
その後も彼女は何度か立ち止まっては振り返り、ヒールの傷を気にしていました。

とても残念だったと思います。

彼女がハイヒールで踏んでしまったビニルシートの上には、運悪く小さな穴が開いていたのかもしれません。
そしてその下には、運悪く尖った砂利があったのかもしれません。
シートが敷いてあるからといって油断してはいけないということです。
十分に気持ちを引き締めてヒールを履かなければならない、ということを改めて感じた出来事でした。


植木の根元を守るスチール製のフタ。しかしヒールを守ってくれるわけではありません。踏んではいけません。


排水路のフタ。一直線上の場所では隙間無く並べられているのですが、カーブでは少しずつ隙間をつくっています。ここにヒールを挟む人が多いようです。


排水溝のフタにヒールが落ちないよう、カバーをかけている場所もあるのですが、このカバーがときどきなくなっているので要注意です。


くせものなのがレンガ道。目地にトップリフトが刺さっているのをよく見ます。レンガの隙間にヒールを差し込む人がたくさんいるようです。

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